中途退学を考えている君へ

平成28年 女性(2)                   全部、読みたい


 思い出。それは私にとって、一番縁のないものでした。小学校、中学校と続いた不登校で、友だちも出来ず、ただ教室で下を向いて、そこにいただけの私にとって、最もいらなかったもの、それが思い出でした。小学校の時、理不尽に先生に怒られた事で、学校という場所、そして何より周囲の大人に対して恐怖心を抱いてしまい、それ以来私は心を閉ざしていたのです。それは中学を卒業するまでずっと続きました。

(中略)

 私はその次の年から、3回目の1年生として学校生活の再スタートを切ったのです。「思い出なんていらない」と思っていた私は、もうとっくに消え去りました。今の私にはたくさんの思い出があります。必要最低限人と関わらず、自分を隠し続けた私を変えてくれたのは、私より年下のクラスメイト達でした。彼らから、私は多くの事を学び、そしてたくさんの思い出をもらいました。皆わたしより年下なのに、とてもしっかりしていて、何より私のことを受け入れてくれました。
 私も、皆のことをよりたくさん知ることが楽しくなりました。恋に悩む子、人間関係に悩む子、仕事の壁にぶち当たる子、それぞれです。そんな彼らの共通点は、「今を精一杯楽しんでいる」ということです。これは簡単なように見えて、実はすごく難しい事だと私は思います。 ・・・(中略)・・・ 共に過ごし、悩みを共有し、何よりひたむきに頑張る彼らの姿を見ていると、「私もたくさんもがいていいんだ、悩んでいいんだ」と気づかされました。完璧じゃなくていい、一つくらいできなくてもいいと思うと、肩の力が抜けて、「素」の自分で人と接することが出来るようになった気がします。

(中略)

 過去を変えることはできませんが、殻に閉じこもっていた自分も、今の自分も、大切な「思い出」です。この先、いろんな困難が待っていても、その「思い出」と共に未来へ進んでいきたいです。