中途退学を考えている君へ

平成28年 女性(1)                   全部、読みたい


「もう頑張らなくてもいいよ。」
母が泣きながら言ってくれたその一言がなければ、もしかしたら私は、生きることをやめていたかもしれません。

(中略)・・・周りから見たらそれはもう酷(むご)い状態だったと思います。以前のように頻繁(ひんぱん)に笑わなくなり、人に近づくこともやめ、ご飯を全く食べない。そんな私のことを友人や先生、家族といった周囲の人たちはとても心配してくれました。特に母は私のことをとても気にかけ、心を痛めてくれました。しかし、当時の私にはその心配が苦痛でした。「早く治(なお)せ」と言われているように感じてしまったのです。治(なお)さなきゃ。早く治(なお)して心配かけないようにしなきゃ。そう思えば思うほど焦(あせ)って、事態は悪化する一方でした。

(中略)・・・復学して1年半が経った高校2年生の後期、私はこれ以上高校にいるのは無理だと感じ、別の高校への転学を決意しました。「高校では友達もたくさん出来たし先生たちもいい人ばかりなのは分かっている。出来ることならこの高校で卒業したかったけど、今の私では無理だから、お願いします、別の高校に転学させて下さい」泣きそうになりながら母に告げると、母は目に大粒の涙を溜(た)め、頷(うなず)きながら「わかった。あなたがそう思っているなら転学しよう。今までよく頑張ったね、お疲れ様。もう無理して頑張らなくていいよ。これからのことはゆっくり考えていこう」そう言ってくれました。その時の私は本当に生きていることに疲れきっていて、全てをやめたいと思っていました。ですが、母の言葉を聞いて、私の心は救われました。無理して頑張らなくてもいい。それはまるで「生きていてもいい」と言われているようでした。

(中略)

 私は音楽が好きです。どんなに気分が落ちていても音楽を聴けば落ち着きます。だから将来は音に関わる仕事、音響関係の仕事に就きたいです。私が音楽に救われた様に、私も音で誰かを救いたい。そんなことを考える様になれたのもこの高校でゆったり過ごせるようになったからです。諦めず私に寄り添ってくれた母、親身になって考えてくれた先生、見放さないでくれた友人、私の周りのたくさんの方々に感謝しながら私は今日も生きていきます。