中途退学を考えている君へ

平成28年 男性                   全部、読みたい


(前略)・・・自分の殻(から)に閉(と)じこもり、喜怒哀楽という感情が消えてしまった私は学校から遠のき、不登校のまま小学校を卒業しました。

 中学では心機一転(しんきいってん)学校生活を楽しみたいと思いましたが、現実はそう甘くはありません。家の中にも安息(あんそく)の地はありませんでした。母の病気が再発したのです。精神疾患(せいしんしっかん)を抱えた母は五分おきに暴言を投げかけるという毎日で、私はそんな母が憎(にく)く、人間不信となりました。

(中略)

 鬱々(うつうつ)とした日々を過ごしていたある日、転機(てんき)が訪れました。母の状態が安定し、退院することになったのです。入院費を払わなくて済むようになった時、兄弟が真っ先に言ってくれたのが「お前はまだ若いんだから高校に進学しろ、学費は俺たちが何とかするから。」という嬉(うれ)しい言葉でした。普通の人には当たり前に訪れる「高校進学」が私の人生にもやってきたのです。喜(よろこ)んだ私は仕事を終えた後中学の先生に頼み、毎日必死で勉強を教わりました。家族の支えもあり、定時制課程に入学することができました。

(中略)

 今、私には新たな目標があります。この国の社会システムや法律を学び、将来は政治家として私のように家庭的に恵まれない子どもたち、不登校の子どもたちを支援し、人生の希望を、夢に向かって挑戦(ちょうせん)する喜びを伝えたいと考えています。様々な苦難(くなん)を乗り越えた私だからこそ、高校定時制課程で学んだからこそ、そういう子どもたちに伝えられることがたくさんあると思うのです。

(中略)・・・兄も私たちの父親代わりとして家庭を守るため孤軍奮闘(こぐんふんとう)していたのです。姉は今の私の姿を見て、諦(あきら)めていた高校進学の夢を実現させました。現在母の調子もよくなり、私が大学進学を打ち明けると「あなたのために母さんも頑張るよ。」と笑顔で言ってくれ、胸が熱くなりました。

 家庭を呪(のろ)い、将来に絶望していた私でしたが、高校で人の温かさに触(ふ)れ大きく成長することができました。「苦難(くなん)こそが大いなるチャンス」その言葉を胸に感謝の気持ちを忘れず、未来に向かって邁進(まいしん)していきたいと思います。